QSN4: Co-コンパクト空間とBaireの範疇定理

Author

KC

Published

2025-12-21

Keywords

cotopology, cospace, cocompact space, KC-space, Nerve, Baire Category Theorem

内容紹介

本稿では, Baireの範疇定理を「co-コンパクト性」という観点から扱った J. M. Aartsら(Aarts, Groot, and McDowell 1970a), (Aarts, Groot, and McDowell 1970b)の結果および, その中で用いられているcotopologyの概念について紹介することを目的とする. よく知られているように, Baireの範疇定理は次の2つの主張を含んでいる:

  1. 完備距離空間はBaire空間である.
  2. 局所コンパクトHausdorff空間はBaire空間である.

通常はこれらを別々に証明するが, いずれもco-コンパクトな \mathrm{T}_{3}-空間の特殊な場合として, 一元的に理解できることがAartsらの仕事によって示されている. 本稿では, その枠組みの基本となるcotopologyの概念の導入から始め, Baireの範疇定理がco-コンパクト \mathrm{T}_{3}-空間に関する一般的な結果として導かれることを示す.

第2章では, 本稿で使用する記法を示すとともに, いくつかの定義およびそれに関連する基本的な命題を示す. 位相空間に関連する基本概念について既知の場合には, 第2.1節の記法のみを確認し, 第2.2節の内容はスキップして問題ない.

第3章では, cotopologyやco-コンパクト性の概念を導入する前に, より素朴な方法で定義される補コンパクト位相の概念を紹介し, 具体的な空間について補コンパクト位相を考えることでその概念に親しむ. その後に明らかになるように, 局所コンパクト \mathrm{T}_{2}-空間の補コンパクト位相は コンパクトなcotopologyである.

第4章では, (Aarts, Groot, and McDowell 1970a)による「cotopology」の概念を導入し, 基本的な性質から始め, Baire空間との関係まで紹介する. 第4.1節では, cotopology に関連した概念を定義し, その基本的な性質についてまとめる. ここで, 局所コンパクト \mathrm{T}_{2}-空間の補コンパクト位相空間が コンパクトなcospaceであり, 局所コンパクト \mathrm{T}_{2}-空間のクラスが co-コンパクト \mathrm{T}_{3}-空間のクラスに含まれることが明らかになる. (Aarts, Groot, and McDowell 1970b)の重要な結果として, 「距離化可能空間において, 完備距離化可能性とco-コンパクト性が同値になる」というものがある. この定理の証明では, \mathrm{T}_{4}-空間の局所有限開被覆に対する脈体についての主張が用いられる. 第4.2節では, 必要となる脈体に関する定理の証明までを行う. ここでの定義や命題およびその証明は児玉・永見(1974)(児玉之宏・永見啓応 1974)第6章の内容に沿ったものである. 第4.1節の基本事項と第4.2節の準備を踏まえ, 第4.3節では, 距離化可能空間において, 完備距離化可能性とco-コンパクト性が同値であることを示す. ここまでの結果から, co-コンパクト \mathrm{T}_{3}-空間のクラスが 局所コンパクト \mathrm{T}_{2}-空間のクラスと 完備距離化可能空間のクラスを含むことがわかる. 第4.4節では, co-コンパクト \mathrm{T}_{3}-空間がBaire空間であることを示し, その結果としてBaireの範疇定理が得られることを示す.

本稿では, 位相空間論の入門書レベルの内容を理解している読者を想定しているため, 証明の行間はできるだけ埋めるように心がけた. 森田(1981)(森田紀一 1981)を読める読者であれば本稿の内容を十分理解できると思われる. 一方で, 専門的な内容まで理解している読者にとっては冗長と思われる個所も少なくないが, ご容赦願いたい.

目次

  • 第1章 はじめに
  • 第2章 記法と基本概念の導入
    • 2.1 記法
    • 2.2 基本概念
  • 第3章 補コンパクト位相
    • 3.1 定義と基本事項
    • 3.2 具体例
  • 第4章 Cotopology
    • 4.1 定義と基本事項
    • 4.2 準備: 脈体に関する定理
    • 4.3 co-コンパクト性による完備性の特徴づけ
    • 4.4 co-コンパクト性とBaire 空間の関係
  • 第5章 Appendix
    • 5.1 Alexander subbase theorem
  • 参考文献
  • 索引

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後日公開予定.

サンプル

References

Aarts, J. M., J. de Groot, and R. H. McDowell. 1970a. “Cocompactness.” Nieuw Arch. Wiskd., III. Ser. 18: 2–15.
———. 1970b. “Cotopology for Metrizable Spaces.” Duke Math. J. 37: 291–95. https://doi.org/10.1215/S0012-7094-70-03737-3.
児玉之宏・永見啓応. 1974. 位相空間論. 岩波書店.
森田紀一. 1981. 位相空間論. 岩波書店.